こんにちは。弁護士の加茂です。
今回は加盟金について解説します。加盟金とはフランチャイズ契約を締結したときに加盟店から本部に支払われる金銭であり、本部が加盟店に提供するフランチャイズパッケージの初期の対価となるものです。本部にとってみればロイヤリティとは別個の重要な収入源ともなるもので、安定的な本部運営のためには欠かせないものといえます。
しかし、その設定や運用を誤れば、加盟店との間でトラブルに発展しやすい性質のものでもあり、「ブランド力に見合わない高額な加盟金を請求された」「加盟金が一切返還されない」などといったトラブルも起きやすく、本部としては慎重に設定・運用すべきものです。
本記事では、フランチャイズ本部が加盟金を巡る争いを未然に防ぎ、加盟店との信頼関係を構築するためのポイントをお伝えします。これからフランチャイズを立ち上げる方も、これからの新規加盟店獲得のために加盟金の設計変更を考えている方も、ご参考にしていただければと思います。
ポイント1:ブランド価値に見合った適正な加盟金設定
加盟金は、本部が提供するブランド力、ノウハウ、開業支援など、フランチャイズパッケージの対価として位置づけられます。その金額設定は、本部の裁量に委ねられる部分が大きいのは事実です。
しかし、だからと言って、本部に一方的に都合の良い加盟金を設定できるわけではありません。フランチャイズ契約の本質が、ビジネスフォーマットの提供とその対価の授受にあることを考えれば、加盟金はあくまで本部の提供価値と見合ったものでなければなりません。
では、どのように適正な金額を設定すればよいのでしょうか。
まず重要なのが、自社のブランド力や店舗の収益性の精査です。加盟店候補者の初期投資額とのバランスを考慮し、利益を出せる水準か客観的に検証しましょう。複数の出店パターンを想定し、事業計画の妥当性をシミュレーションするのも有効です。
また、同業他社の加盟金相場を調査することも考えられます。同業他社の動向は、適正価格を探る上で重要な指標となりますし、同業他社に比して高額な加盟金を設定してしまうと、加盟店が損した気分となりやすく、加盟店からの加盟金返還請求等の引き金となりかねません。
このように、加盟金が高額に過ぎれば、加盟店募集の障壁となるだけでなく、将来的な返還請求のリスクもはらんでいます。逆に安価に抑えれば、本部運営の採算が取れなくなるおそれもあります。ブランドイメージとのバランス、加盟店の投資回収見通しなどを総合的に勘案し、慎重に判断することが求められます。
ポイント2:加盟金の使途を透明化し、説明責任を果たす
加盟金の使途内訳を明確にし、加盟店に開示することは、トラブル防止の観点から非常に重要です。加盟店から見れば、自らの支出がどのように活用されるのか知りたいのは当然のこと。使途のブラックボックス化は、不信感を招く温床となります。
そこで本部は、加盟金を巡るトラブルをできる限り回避するために、加盟金の内訳を可能な限り細分化し、各費目の根拠を明示することが考えられます。たとえば、「研修費●●円(●日間の研修プログラム)」「広告宣伝費●●円(新規出店時のチラシ●万枚作成)」といった具合です。特に開業前の研修費用や店舗デザイン料、什器・備品の調達費用など、目に見える形で加盟店に提供されるサービスについては、一つひとつ丁寧に説明することが肝要です。
開示方法は、契約書や募集要項、法定開示書面への記載、説明会での口頭説明など、複数の手段を用いるのが望ましいでしょう。資料は平易でわかりやすい表現を心がけ、加盟店からの質問にも丁寧に答える姿勢が欠かせません。
特に募集段階での開示は、候補者にとって、加盟を検討する際の重要な判断材料となります。ここで信頼を失ってしまうと、新規加盟店獲得の大きな障害となってしまいます。
こうした使途の透明化は、加盟店との信頼関係の基盤となります。丁寧な説明と情報開示の積み重ねが、トラブルを未然に防ぐ近道と言えるでしょう。
ポイント3:加盟金不返還特約の適切な運用
「支払われた加盟金は理由の如何を問わず返還しない」といった内容の条項は、加盟金不返還特約と呼ばれています。本部にとっては、加盟店にノウハウや営業機会を提供した以上、その対価である加盟金の返金には応じられないというのは合理的です。
しかし、この特約があれば無条件で本部が保護されるわけではありません。そもそも不返還特約が有効に機能するには、本部側に債務不履行がないことが大前提。開業前の研修や開業後の経営指導など、加盟金の対価としたサービスを適切に提供する必要があります。加えて、店舗物件の選定や設計・施工、什器・備品の手配など、出店に向けた本部のサポートが、加盟金の対価性を裏付ける要素となることを意識しましょう。
また、開業前の段階で、加盟店が出店を断念したケースなどでは、特に慎重な対応が求められます。加盟店は全くメリットを得られなかったわけですから、こうした状況下で加盟金を返還しないとなれば、紛争となる可能性がグッと高まります。
さらに、特約の文言があまりに加盟店に不利な内容では、暴利行為として無効と判断される可能性もあります。返還義務が生じる例外的なケースを具体的に定めるなど、バランスの取れた条項設計が肝要です。
加盟金不返還特約は、本部の正当な利益を守る盾となる反面、トラブルの引き金ともなる諸刃の剣です。契約書について弁護士のチェックを受けるなど、慎重な運用を心がけましょう。
さいごに:加盟店との気持ちの良いフランチャイズ関係のスタートを!
加盟金をめぐるトラブルは、加盟店の離反や新規出店の停滞など、ビジネスの根幹を揺るがしかねないリスクをはらんでいます。
そのため、加盟金の適正な設定、使途の透明化、不返還特約の適切な運用を基本動作として心がけ、加盟金をめぐるトラブルを回避し、加盟店と気持ちよくフランチャイズ関係を開始できるようにしていきましょう。
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