【競業避止義務】フランチャイズビジネスの競争力を守る鍵:競業避止義務の適切な運用とは

加盟店とのトラブル

こんにちは。弁護士の加茂です。

今回は、フランチャイズ契約における「競業避止義務」について、本部運営の視点から詳しく解説します。フランチャイズビジネスの健全な発展のために、競業避止義務の重要性を再確認し、義務違反のトラブルを未然に防ぐための実践的な対策をお伝えしたいと思います。

そもそも、競業避止義務とは?主な2つの目的

フランチャイズ契約では、加盟店が本部の許可なく、フランチャイズチェーンと同種・類似の事業を行うことを禁止する「競業避止義務」が定められるのが一般的です。この義務には、大きく分けて2つの目的があります。

① 本部の営業秘密やノウハウの保護

加盟店は、本部から提供された貴重なノウハウを活用して事業を展開します。その対価として、加盟金やロイヤルティを支払っているのです。しかし、もし加盟店が無断で競業行為に及べば、本部の大切な資産であるノウハウが不当に流出してしまいます。本部にとって、長年かけて蓄積したノウハウは、競争力の源泉ともいえる重要な財産。それを守るために、競業避止義務の存在意義があるのです。

② 本部の商圏と顧客基盤の防衛

本部は、自社のノウハウとブランド力を武器に、商圏を開拓し、顧客を獲得してきました。加盟店による無断の競業は、その努力の成果を踏みにじる行為にほかならず、本部の支援で築いた顧客基盤を自らの利益のために不当に利用する行為といえます。フランチャイズビジネスは、本部と加盟店が共存共栄するシステム。一方的な利益の流用を防ぐためにも、競業避止義務が不可欠なのです。

以上の理由から、ほとんどのフランチャイズ契約書には、競業避止義務条項が盛り込まれています。本部の重要な資産を守り、フランチャイズシステムの根幹を維持するために、欠かせない条項といえるでしょう。

有効な競業避止義務条項の3要素

それでは、強力な競業避止義務を課せば安心か、というとそうではありません。特に契約終了後の競業避止義務は加盟店の営業の自由を制限する側面を持つため、過度な制約を課してしまうと公序良俗等に反して無効と判断される可能性があります。

契約終了後も有効な競業避止義務条項となるにはどのようなものとすべきでしょうか。これまでの裁判例を踏まえますと、以下の3つの要素が重要な判断ポイントとなっています。

①禁止される業務の範囲が合理的か

②禁止される地域的範囲が合理的か

③ 禁止される期間が合理的か

ここでいう「合理性」とは、要するに、本部の正当な利益の保護に必要な範囲内に収まっているかどうか、と言い換えることができます。つまり、加盟店のノウハウ流用を防ぎ、本部の商圏を守るために、合理的な制限となっているかが問題なのです。

裁判例の傾向を踏まえますと、禁止期間は2年程度までであれば認められやすく、地域的範囲は店舗所在地の周辺に限定されるようなケースであれば、契約終了後も競業避止義務違反を認める傾向にあるといえます。もっとも、契約書の文言上は期間や地域の限定がなくても、実際の制限の運用が合理的な範囲内にとどまるのであれば、有効と判断されることもあります。結局のところ大切なのは、競業避止義務が総合的に見て、本部の利益保護に必要かつ合理的な範囲の制限となっているかどうかなのです。

加盟店の競業避止義務を発見したら?2つの法的手段

万が一、加盟店が競業避止義務に違反する行為を働いた場合、本部としては毅然とした対応が求められます。とるべき法的措置について整理しておきましょう。

① 損害賠償請求

本部が被った損害について、賠償請求できます。

違約金が定められている場合はその金額を、定めがない場合は逸失利益(違反期間のロイヤルティ相当額など)を基準に損害額を算定するのが一般的です。立証の難易度を考えると、予め違約金を設定しておくのが賢明と言えます。

但し、違約金についてもあまりに高額な違約金は無効とされるリスクが高いため、適正な範囲にしておく必要があります。どの範囲であれば適正かということは一概には言えず、具体的な違約金の定め方については弁護士に相談して定めるのが良いでしょう。

② 差止請求

速やかに違反行為の差止めを求めることも重要です。但し、訴訟の場合には手続に時間を要することから、結局競業避止義務の期間満了までに間に合わず、差止請求が認められないということも考えられます。そのため、仮処分による差止めを行うことも検討されます。但し、仮処分の場合には、保全の必要性という条件が加重されることに加え、裁判所が定める担保金を供託する必要があるため、申立てに当たっては弁護士とも相談しながらその必要性や有効性を吟味する必要があります。

これらの法的措置を講じる際は、その根拠となる事実を固めておく必要があります。営業秘密の特定、違反行為の立証など、日頃から証拠を保全しておくことが肝要です。弁護士とも相談しながら、冷静かつ慎重に対応することが求められます。

競業避止義務をめぐるトラブル予防の4つのポイント

それでは、競業避止義務をめぐるトラブルを未然に防ぐには、フランチャイズ本部はどのような対策を講じるべきでしょうか。ここでは、4つの重要なポイントを解説します。

【ポイント1】適切な競業避止義務条項の設定

トラブル予防の第一歩は、適切な競業避止義務条項を契約書に盛り込むことです。具体的には、禁止される業務・地域・期間の3点について、合理的な範囲内で、できる限り明確に規定するよう心掛けましょう。曖昧な条項は、解釈の余地を生み、紛争のもとになりかねません。弁護士等の専門家とも相談しつつ、綿密なすり合わせを行うことが肝要です。

【ポイント2】加盟店との積極的なコミュニケーション

義務違反を防ぐためには、加盟店との良好なコミュニケーションが何より大切です。競業避止義務の趣旨や内容、違反した場合の措置などについて、普段から丁寧に説明し、理解を得ておくことが肝心です。加盟店との信頼関係を築き、相互の利益につながる義務であることを伝えることが、違反の芽を摘むことにつながるはずです。

【ポイント3】違反の早期発見と迅速な対処

万が一、義務違反の兆候が見られたら、迅速な対応が求められます。日頃から加盟店の動向に注意を払い、怪しい兆候をいち早くキャッチする体制を整えておきましょう。そして、もし違反行為を確認したら、すぐに弁護士に相談し、差止請求や損害賠償請求など、法的措置を検討します。毅然とした態度で臨むことが、違反の拡大を防ぐ近道となります。

【ポイント4】契約終了時の適切な引き継ぎ

フランチャイズ契約が終了するタイミングこそ、競業避止義務違反のリスクが最も高まる時期です。本部としては、契約終了時の手続きを事前にきちんとマニュアル化しておく必要があります。看板やのれんの撤去、マニュアル類の返還など、ノウハウの流出を防ぐための措置を具体的に定め、加盟店の協力を得ながら着実に実行することが求められます。

さいごに:競業避止義務は諸刃の剣

競業避止義務は、フランチャイズビジネスにとって、正に諸刃の剣ともいえる規定です。義務の内容が不明確だったり、合理性を欠いていたりすれば、かえって本部の立場を危うくしかねません。反対に、適切に運用することができれば、ビジネスの根幹を守る強力な盾となるはずです。

そのためには、義務の内容を明確に定め、加盟店の理解と協力を得る地道な努力を続けることが不可欠です。一過性の措置ではなく、日常的な取り組みとして競業避止義務の重要性を意識し続ける。その積み重ねこそが、トラブルのない健全な本部運営につながっていくのです。

今回解説した内容を参考に、皆様の実務に役立てていただければ幸いです。

フランチャイズビジネスの法律問題は多岐にわたります。競業避止義務以外にも、加盟店とのトラブル予防・解決のためのポイントを、引き続き本ブログでお伝えしていく予定です。今後の更新情報にご期待ください。

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